IoTによる生産性向上POINT
監視業務のデータ取得によ る作業者の負担軽減
八鹿酒造(株)
監視業務の負担軽減と品質安定化を目指す
温度が命の清酒造り
テレビの天気予報でもおなじみの八鹿酒造(株)。
清酒、焼酎、リキュールなどを製造しています。
清酒の製造工程で極めて重要なのが、製麹(せいきく)工程。米から麹を作る工程です。
この工程では、微妙な温度変化を捉え、混ぜる作業等を行う必要があり、麹室(こうじむろ)に泊まり込みで温度監視を行うこともありました。
温度の微妙な変化に常に気を配らなければならず、仮眠が取れたとしても気の休まることのない激務は、従業員にとって負担となり、辞めていく方もいたそうです。
こうした同社の課題を解決するのが、温度を常時精緻に監視し、作業が必要なタイミングなどで仮眠室や従業員のスマホにアラームを鳴らすIoTシステムです。
スマートものづくり応援隊の柳井電機工業(株)と打ち合わせを重ねながら、導入を進めています。
焼酎の蒸留工程にもIoT
同社のIoT導入は、焼酎の蒸留工程にも及びます。
人手で何度も計測していたアルコール濃度を、高精度のアルコール濃度計で常時計測することで、従業員の負担を大幅に軽減できます。
また、時間間隔を開けていた濃度計測が常時計測になることで、蒸留プロセスの管理精度が上がり、焼酎の品質向上にもつながることが期待されています。
さらに、温度やアルコール濃度の常時計測データは、酒税法上の各種報告業務にも活用でき、事務作業の軽減にもつながります。
杜氏の技の完全コピーは不可能
業務効率化、品質安定化に向けてIoT導入を進める同社ですが、加藤製造部長は、「杜氏のノウハウを完全にデータ化することはできない」と言います。
同社の挑戦は、手造りの手法はそのままに、蔵の持ち味を損なうことなく、杜氏の技とIoTのメリットをリンクさせていく点が画期的です。
また、同社では、今回の開発の成果を、「大分・九州の酒造メーカーに普及していきたい」という意向を持っています。
「蔵の特徴、地域の環境・風土で酒の味は大きく変わる。仕組みを広げても同じ味にはならない」という加藤部長の言葉に、同社の懐の深さと自社ブランドへのプライドが感じられました。
“八鹿”というブランド名は、同社三代目 麻生観八氏と、
杜氏 仲摩鹿太郎氏から一字ずつ取って命名されたそうです。
社長の経営手腕と杜氏の匠の技が、お互いを尊重し、高め合っていく同社の姿勢が見事に表現された今回のIoT導入。
他の酒造メーカーにとっても光明となりそうです。
- 企業名
- 八鹿酒造(株)
- 所在地
- 玖珠郡九重町右田3364
- 設立年
- 1864年
- 従業員数
- 95名
- 代表者
- 代表取締役社長 麻生 益直
- 担当者
- 製造部 加藤 正雄
- TEL
- 0973-76-2888
- メール
- masao.kato@yatsushika.com
- ホームページ
- http://www.yatsushika.com/